読了本

『水鏡綺譚』近藤ようこ青林工藝舎)。
待望の新装完全版。足をくじいて原画展&サイン本を買いに行けなかった。のでアマゾンに注文したらたちまち品切れの連絡が。ようやく送ってきたのはもう第2刷になっていた。売れてるのかな、だったら嬉しいな。上下巻だったものに描きおろし完結編を加えて1冊にしてあるからずいぶん分厚い。ずっしり。この重さが愛しい。高橋留美子の帯文に共感してホロリ。
あらためて読み返すと、いいなあ、と思うのだ。「骨笛」や「水の底の紅」のような湿っぽくなりそうな話があっけらかんと終る。そこに味がある。完結編の「夢幻」にもその趣は強くて、未完のときの悩めるワタルのまま十年以上待った読者としてはよくぞここまで成長したと感慨深いのだが、それ以上に鏡子のその後が気になる。幸せになってくれるといいな……いつか、の果てに。
十二年を経て描かれた「夢幻」、作者がいうほど絵は変わっていないように思う。放下に呑まれる牛がかわいいなあ。吐き出されるときはベロが出てるのだ。あとがきで言及されている「カムイ伝」も読んでみたくなった。旧刊あとがきの作者による作品解説がなくなってしまったのはちょっと勿体ない気がする。