読了本

御宿かわせみ 新装版』平岩弓枝(文春文庫、2004)。
ちょうど文庫の新装版が出始めたのでシリーズのはじめから読み返す。ひゃあ、キャラの言動が若い若い。そもそも執筆されたのが30年近く前なのだもの、平岩さんの筆もどういうムードにするのか決めかねている感じだ。まあ若いのに老練な源さんあたりはほとんど変わらないけれど、東吾とるいがやたら熱々。すっかり当てられつつ、どこか怪談ふうの「倉の中」やラストが爽やかな「江戸は春」などを楽しんだ。

バートラム・ホテルにて』アガサ・クリスティ作/乾信一郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、1976)。
ミス・マープルもの。舞台は古きよき時代の香りを残す骨董品のようなホテルで、昔ながらの上品なお客たちに「バターのたっぷり入ったほんもののマフィン」を出す。これがまた美味しそうなのだ、しかも何度も出てくる。いちばん怪しい者が犯人なあたりちょっと安易すぎる印象だったが、物忘れの酷い老牧師の行方にはとても気を揉まされた。

『焼酎ぐるぐる』大田垣晴子ワニブックス、2003)。
焼酎をもとめて九州各地の蔵元を巡るイラスト旅行エッセイ。丁寧に描いてあって楽しい。酒だけでなく作り手紹介にも力が入っている。今は焼酎ブームだが、地元の小さな蔵元が大切に作っているものを大都市の酒呑みが消費してしまうのは何だか寂しいね。そりゃ私だって飲みたいけどさ。