読了コミックス

『たんぽぽクレーター 全2巻』筒井百々子新書館)。
核で汚染された地球の、特に重症の子どもたちを治療するため月に設けられた医療都市「たんぽぽクレーター」に生きる人々の姿を描いた傑作SF。破綻のない繊細な筆致で緊迫感のある骨太のドラマが展開し非常に読み応えがある。明確なテーマ、キャラクターもいい、設定もリアルに作りこまれていて、絶版で入手困難なのがあまりにも惜しいと思う。
ここに描かれる21世紀初頭の科学技術に現実はまだ追いついていないが、核汚染やテロなどの悲慘はしっかり実現している。作者は今ごろ頭を抱えているかもしれない。しかし人類の未来に待っているのが破滅ではなく、ジョイや院長の灯した灯が次世代に受け継がれ大切に育まれ続けていくことを私は信じたい。