ケンカ

実は正月早々、愛犬メルがケンカをして大変だったのだ。
お相手はワサビ、アメリカン・ピット・ブルテリアのメス。渡米していた知人が帰国するとき一緒に連れ帰ってきたその犬はかつて闘犬に使われていた犬種だそうな。外見こそコワモテで筋肉質だが性格はいたってフレンドリー。フレンドリーすぎて、うちに来たとたん私に濃厚キッスをするため飛びかかってきたくらいだ。
正月気分でほろ酔い加減だった私は勢い余ってひっくり返った。たぶんメルは私が襲われたと勘違いしたのだろう、ワサビに問答無用で飛びかかった。和やかムードの居間は一転して修羅の場と化し、苦労して二匹を引き離したときにはすでに血を見ていたのだった。
私たちも慌ててたものだから「やめろ、やめなさい!」と必死に叫ぶばかりだったけど、よく考えたらワサビには英語で命令しないといけなかったのだよな。
先制攻撃をうけたワサビは目の上をちょっと切ったが、たちまち形勢逆転、メルはこてんぱんにやられた。体格は同じくらいだが若さと体力が違う。といっても一番ひどかった脇腹の大きな噛み跡がいま痣とカサブタになっている程度だから、ワサビも手加減はしていたのだろう。
こんな事が起こらなかったら二匹は友達になっていたはずだったのになあ。私もワサビと遊びたかったよ〜。なんせ顔も良く見ないうちに彼女は帰ってしまったのだ、最初にメガネを吹っ飛ばされたから……。