読了本

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

日本ファンタジーノベル大賞受賞作の文庫化。著者のデビュー作だが『きつねのはなし』のあとに読んだら内容の違いにたいそう驚いた。といっても文章や作風はそのままに扱う題材だけ変えてる、そんな印象ではある。異性と縁のない男のひがみとプライドが生んだ誇大妄想みたいな主人公の語りはひどくリアルで身につまされると同時に緻密な計算が感じられるが、インテリっぽい硬さはなくむしろまろやかで、とてつもなくユーモラスかつ幻想的だ。この人の作品の舞台はいつも京都なのかな? 鍾馗みたいな風貌に乙女の心を宿した高藪のその後が気になる。

かはたれ (福音館創作童話シリーズ)

かはたれ (福音館創作童話シリーズ)

家族のいない子河童の八寸はひと夏の間、猫の姿で人間の世界へ修行に出されることになった。野良として人間を観察するうち、母を亡くしたばかりの女の子・麻と出会って一緒に暮らしはじめるが……。まったりと話が進んでいただけにクライマックスの緊張感はただごとではなく、ちょっと泣けてしまった。舞台は鎌倉で作者も鎌倉在住だそうだが、モデルになってる土地があるのだろうか(物語の定石としてはみんな本当にあったことだったりするのよねー)。先月「たそかれ」という続編も出たらしい。

読了本・コミックス

ガウガウわー太 7 (IDコミックス REXコミックス)

ガウガウわー太 7 (IDコミックス REXコミックス)

新装版の完結巻。話が途中で終わってるのは、ウィキペディアによれば打ち切られたためらしい。当時の編集もみる目がないね。まあ話が硬派(社会派?)すぎるのを嫌ったのかもしれないけど、そこがこの作品の魅力でもあるわけで。他にないもんなあこういう作品。もと獣医師というだけあって作者の主張には重みがある。一迅社はエライ、続編を載せるだけでなくこれまでの話のフォローもちゃんとしてくれるんだから。この巻では委員長が大活躍。入浴シーンまであるとなりゃ、人気出るのも当然だわ。

ガウガウわー太2 1 (IDコミックス REXコミックス)

ガウガウわー太2 1 (IDコミックス REXコミックス)

というわけで続編の冒頭は新装版のラストと繋がっている。ラベンダーの一品種「おかむらさき」が遅れてきた弟みたいな花というのを太助になぞらえるのはうまいなあ。みさと先輩の胸の鼓動が伝わってくるようで、こっちまで胸がきゅんきゅんしてしまった。委員長が一歩下がって“仲間”のポジションに落ち着いてしまいそうなのはちょっと残念。でも略奪愛とかは似合わない子だし……その分まいが暴れそうだが。いきなりのファンタジー展開には驚いた。太助の能力は「そういう設定」のまま流すのかと思っていたので。

鳴渡雷神於新全伝 (第1集) (時代劇漫画ジン)

鳴渡雷神於新全伝 (第1集) (時代劇漫画ジン)

タイトルの読み方は「なりわたる らいじんおしん ぜんでん」。明治に流行した実録毒婦もの(みたいなジャンルがあったらしい)の主人公・お新の活躍をオリジナルストーリーで描いたユーモアたっぷりのピカレスク活劇。型にはまらないアウトローのお新姐さんが激しくエロかっこいい! でも姐さんの遊びは危険すぎます! ご一新前はお姫様育ちってホントかいな。今後は生い立ちなども描かれていくのだろうか。新聞社の探訪員・矢藤専三や姐さんの子分・馬尻の銀二といった脇役もおもしろい。